田野井製作所の営業は『ドクターセールス』を目指しておりますが、一体それは何か。
ドクターのようなセールス、営業の医者化です。博士の方のドクターではありません。
私は田野井製作所に入社して29年、毎日朝から晩までネジと向き合ってきました。お客様と話をしていく中で気付いたのは…
・あまりにも皆様がネジについてご存じない。
穴の中のグルグルギザギザが、良いのか悪いのか、合格か不合格なのかを断定するのは困難。
・タップの評価ができていない。
メネジの合否判定が困難なので、タップの評価も困難。“なんとなく”“悪くなかった”が多い。
・問題の根本原因が掴めていない。
ネジもタップも評価できていないので、原因を掴めないままに対策している。
…ということです。これでは安心・安定した加工や品質、大幅なコストダウンなど見込めません。そこで我々のような毎日ネジに携わる専門のものが正しく評価すれば喜ばれると感じていました。
私には7つ道具があります。
・ラップトップP.C …資料をお見せする
・Dino Lite …マイクロスコープ(顕微鏡タイプ)
・Dino Lite …マイクロスコープ(内視鏡タイプ)
・ルーペ …自然光で実物を見る
・ノート(方眼) …3Dを表現するために図を描く
・フリクションボールペン(4色) …図を描く際に色を分ける
・直尺 …突き出し長さや干渉距離などを測る
患者(お客様)の声(発生している現象やタイミング、頻度や連続性)を聞き、これらを駆使して病巣(根本原因)を特定し、納得できる説明を心がけております。それを「まるで医者みたい」と呟いたところ、弊社の会長が「ドクターだっ!ドクターセールスだっ!」と命名されました。
医療の世界ではインフォームド コンセント(Informed Consent)と言うのだそうですが、十分な説明と今後の治療方針をメリット・デメリットともに説明し、同意をいただくというものを可能な限り実施しております。
検査もします。レントゲン…とは言えませんが、切断して断面からの評価や、マイクロスコープで拡大した写真もお見せします。マイクロスコープは持ち歩いているので、その場で拡大画像をお見せすることができます。そして調査報告書は、できるだけお客様と直接話をした私や担当営業マンが作成するようにしております。お客様からうかがった内容を、調査員へ漏らさず全て伝えることができないだろうことからです。『話していたことが報告書に反映されていない』などということがないようにです。
おなかが痛いから腹痛の薬、腰が痛いから温湿布…ではなく、なぜ痛いのかを追及してから処置を始めます。みなさんも医者でもない人から勧められた薬や、ろくに診ずに処方された薬は飲みたくないかと思います。
ましてや多くのお客様から『タップは一番難しい』と言われます。前述のように知見が足りていない中で、納得できる説明がなければ怖くて試せません。解決のために藁をもつかむ思いの方は別でしょうが…。ただそれでは、成功しても何が良かったのかがわからず再発してしまいかねません。
しかし必ずしも特定できるとは限りません。その場合は加工現場にお邪魔して、加工機が生産しているところを拝見します。もしかすると加工環境に問題があるかもしれないからです。その場合は『生活習慣病の改善を指導』とでもいうのでしょうか(笑)。その場合は薬(タップ)を処方するべきではなく、完治してから栄養剤のような感覚でより良いものを提案するようにします。
以上から、私は大きな効果が期待できるときや明確な違いが表れるケースでしか提案をしません。多少の効果などは、日常のバラつき(材料の変化、切削油の劣化、気温の大きな変化、前工程工具の摩耗…など)で吹き飛んでしまうからです。ライバルメーカーの製品と似たようなものでは似たような効果しか得られず、試すだけ無駄です。もしそれで甚大な問題が発生したら…迷惑でしかありません。
私は後輩たちに、「テスト品を提出する場合、それがどんな機能でどんな効果が得られるかお客様に説明しなさい。そして正しく成果を出せているか、必ず確認しなさい。」と厳しく言っています。「取れたらラッキーっ!」…と無責任にも偉そうに無償サンプルを提出するのは罪です。私のお客様で過去に、テスト品の下穴ドリルを使って流出させ、大損害を被ったところがありました。
加工をされるお客様は、必ずしもすべての工具や加工に精通しているとは限りません。工業大学で学ばれたことがある方も多いでしょうが、全てを学べたわけではないですし、新技術はどんどん生まれていきます。
そこで私は講習会(約90分)をおこなうようにしております。題して『ネジってなぁに?』です(笑)。題名そのままの講習内容で、製品説明は一切行わず、もちろん無料です。皆様も日常の業務から学ばれていることと思いますが、実は仕事を教えてくれた先輩も、あまり詳しくなかった…なんてことも。ドリルのことはわかりませんが、どのような下穴が良いかはお伝えすることができます。
私は文系大学の経営学科卒で、入社するまでタップのことは1ミリも知りませんでした。しかし先輩やお客様方に教えていただけて今がありますので、それを皆様にお返しすると思って実施しております。田野井製作所のタップを1本も使用したことがないお客様でも、もちろん無料です。
『わからないから怖い』『怖いからタップを替えたくない』『試したけどよくわからなかった』…などを言われ続け、今のようなスタイルに至りました。
後輩営業マンたちにはドクターセールスになるべく教育や指導を行っておりますが、こればかりは向き不向き、得手不得手、感性、モチベーション…など様々ですので、全員がなれるとは限りません。しかし不安になっている患者を無視して、自己満足的で傲慢な提案はさせないように努めております。
ドクターと呼ばれることが増え、本当にドクター(博士)になるために日本工業大学の門を叩こうかと迷っているところです(笑)。
ドクターセールス統括部 吉川
