株式会社田野井製作所 TANOI
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過去最高の改善効果

ドクターセールス統括部 吉川

私には忘れられない、過去最高の改善効果を打ち出した案件があります。

価格4倍、寿命25倍、折損回数180回/月⇒0回、不良の流出ゼロ…というもの。年間で億単位の削減ができているはずです。

2年に1度、名古屋で開催されるメカトロテックジャパン展示会で、馴染みの商社営業マンN氏が血相を変えて私のところに来ました。「O社のK課長が今から来るって。すごく怒ってる…」と。金曜日の夕方のただでさえ混んでいる名古屋方面へ、15時半に工場を出発して17時に着くからと…。

到着されたK課長は挨拶もそこそこに、「おまえらやるって言っただろっ!中途半端にするなっ!」と。

そのお客様では2年ほど前から生産されている燃料系自動車部品(S55Cの調質品、HRC30前後)のM6×1加工でライバルメーカー製のタップを使用しており、折損多発で困っていらした。内部給油付きのマシニングセンタ(BT30)を使用しているものの、細いサイズで4Dほどの深い有効長、さらに止まり穴と貫通穴があるという難しいワーク。それをスパイラルタップで加工されていたのだが、切り粉の噛み込みと思われる欠損や折損、切り粉残りによるゲージ不良…と、スパイラルタップによる代表的な問題のオンパレード。

それを対策しようと対策品を提出していたが、何度トライしても同様の問題が発生してしまい、効果が得られないままになっていた。次に打つ手がなく、改善活動が止まっていたことを怒っていらっしゃいました。17時に到着され、展示会場が閉館となる19時(当時は金曜日だけナイター開催でした)まで、展示品も一切見学されずにお説教を賜りまして…。

私とその商社営業マンN氏は、同じ時期にそのO社を担当しており、この時点では担当を降りていました。しかしK課長と約束し、この件に限って復帰することになりました。

復帰してまずは現状の確認。

・これまで試したタップの仕様とその結果 …ライバルメーカーと合わせて10種類以上、全て不満足

・発生する頻度とタイミング                        …ランダムで、明らかに切り粉の噛み込み

・求める結果                                                …折損予防とコンタミ対策

そしてこのような加工の場合における王道の設計にて対策品を2種類製作。…も、やはり同じ結果。

そこで私は担当されていた生産技術の方に、ハッキリと申し上げました。

「転造タップに替えられなければ、諦めてください。」

…と。最後通牒というか、脅しのような(笑)。でも、できたらとんでもない成果を約束しますとも。

燃料系部品ともなると納入先の承認を得るのも厳しく、下穴径が変わるだけでなくネジの成型方法も変わるので工程変更だけでなく、評価試験まで必要になります。一朝一夕で承認が得られるわけではないので、年単位の活動となります。

目指すのは、

・安定加工

・不良の撲滅による流出ゼロ

・ネジとしての品質を高める

・コストダウン

…と、強欲なまでに最高の結果を目指すことにしました。

申請をする前に、正しく良いネジができなければなりませんので、試作をすることになりました。

①    同じ材料・同じ設備で、転造タップ加工ができるか確認⇒加工できた

②    山頂の繋ぎ目(シーム)は好ましくないので、除去するシームレスタフレットを使う⇒加工できた

③    どうせならと、超硬化して寿命も延ばそう⇒加工できた

…という手順で確認しながら品質を確認していった。ゲージの状態も見た目も良いメネジができ、関係者は安堵した。そして決意とともに承認申請へ。

その時に設計した仕様は、

・シームレスタフレット…シーム除去で斜め締め予防(組立からのクーレム予防)、洗浄液の残留予防

・ゼロチップ(サイドスルー)…止まり穴と貫通穴が混在するので、流量アップと循環効率アップ

・ラップ処理…表面を磨くことで低摩擦抵抗、コーティングの密着アップ、寿命アップ

・AlCrNコーティング…低摩擦抵抗、耐摩耗性アップ

…と、考えられることを全て盛り込んだ。

1年半ほど経過して最終評価が近づいたころ、生産技術担当者より激震の報告が。

「加工後にアルカリと酸で洗浄しているが、メッキ後に染みが見られた。酸の染みだった場合は錆が発生してしまうために許されず、テストは中止となってしまう。」と。これには関係者一同が震えました。

…が、成分検査をしたところ、染みはアルカリでした。一同は胸をなでおろしましたが、「でも許されることではなく、解決できなければ中止と言われてしまった。」これには参りました。転造タップにしたからといって、洗浄液が染み出てしまうとは考えにくい。ネジ面が綺麗になりすぎて、表面張力で付着してしまうのか?クーラントの流量が多くなりすぎたのか?など、可能性を検討しました。

ただそこでひとつの疑問が浮かび、確認していただきました。

「現行品に染みはないのですか?」

確認してみたら、現行品でも染みは残っていたそうで、無罪でした(笑)。

そして着手から約2年が経過したころに、納入先から承認が下り、切り替えが決定しました。海外の2工場も順次切り替わり、一件落着となりました。

成果としては最初に書いた通りですが、その他にも…

・180台/月以上の不良削減、廃棄物削減

・180回/月の折損による設備や冶具のダメージを撲滅

・180回/月の機械停止時間を撲滅

・寿命が25倍なので、交換回数が1/25に減少(回数としては2,000回/月⇒80回/月)

・検査工程の簡略化、検査員のストレス減

・購入本数が生産量に比例し、工具室の調達工数削減と在庫減

・流出による対応の削減

・精密部品製造の企業ブランドを死守

…など、大大大成功っ!と自信をもって言える結果となりました。

後日談ですが、きっかけをくださったK課長に完了の挨拶で伺いました。

K課長:「ああ、ご苦労さん(さらっと)」※本心はすごく評価してくれています…たぶん。

私  :「もっと褒めてくださいよー。感謝状をください。」

K課長:「ああウチは、手書きなんだけどいいか?それも俺の。」

私  :「それでもいいですっ!」

K課長:「ああそれから名刺サイズなんだゎ」

私  :「それでもいいですっ!」

もちろんまだいただいていませんね、K課長。

いや、今はK部長、いやK社長でしたね。ご勇退されるまでにはくださいね。