株式会社田野井製作所 TANOI
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名古屋に転勤して最初の案件

ドクターセールス統括部 吉川

私は97年に入社し、99年の10月に埼玉から名古屋に転勤しました。

そしてすぐに訪問して応対した案件を今でも忘れられません。

以前は大きなお取引があったお客様から、新しい加工が始まるので相談に乗ってほしいとご連絡をいただき、当時の上司と訪問しました。

S48Cのエンジン部品で貫通穴。ガンタップ(ポイントタップ)を使うのですが、コスト削減のために自社で再研磨をされたいとのことでした。ガンタップの斜めの溝を再研磨するのは難しいですが、されたいのであればこのようなモデルはどうかと提案いたしました。

ただその時点でライバルメーカーとテストが始まっており、ときどきネジゲージ(GP)が通らなくなるという問題が発生していたと聞きました。そうなると再研磨どころではありません。当然ながらコストよりも品質が優先されますので、その対策をする必要があります。

担当する生産技術のMさんから、私からのテスト品を使用して2万個中で3個不良が見つかったと聞かされました。当時の私には、それが多いのか少ないのかもわからずにいると、

「その3個を発見するために、全数検査しなきゃならないんだよ?!」

…と。私は甘ちゃんだったようです。

入社3年目の私は、20年先輩の上司と検討しましたが、原因と対策がさっぱりわかりません。まだドクターにもなっておりませんでしたし、やみくもにテスト品を乱発しました。しかし当然のごとく、結果は伴いません。

そこで技術者を召喚しました。技術課長(当時)の木暮さんに来ていただき、加工現場を視察してもらいました。実際にタップ加工している専用機の前に立ち、5分ほどじっくり観察していると、

「あ、いまピッチエラーを起こした」

…ですって。音を聞いて設備の異常を察知したのです。そして、

「じゃあ、あーしてこーしたタップを作れば、解消できるんじゃないかな。」

…ですって。わけがわからないままその設計で手配して納入したところ、全く不良が発生しなかったそうです。

どんな魔法を使ったのかを聞きましたが、レリーフ(逃げ)形状を調整したのだそうです。田野井製作所のスパイラルタップとガンタップには、送りエラーを補正するタフレットレリーフというものが設けられており、それを同社向けに微調整したとのことでした。

これには関係者一同が驚愕し、こんなすごいことができるメーカーには講義をお願いしたいと、50人ほどの生産技術や製造、工具室の方々にお集まりいただきました。ただ…ガチ設計者だったので、内容は難しかったかと…。それ以来、私はその方を神様と呼んでいます(現在は嘱託で頑張っていただけています)。その方は最近にも、鋳物用の超硬タップの開発に、神様っぷりを発揮されました(その話は後日に)。

その製品の量産が立ち上がるまで、段取り確認や品質確認など2年を経て、量産加工が始まったときの喜びはひとしおでした。その後に下穴不良による大きな流出事故がありましたが、タップに問題ないと評価され、逆に信頼も増したように感じました。

ただ同時期にコーティング見直しテストで寿命を50%アップに成功していたのですが、事故直後で変化点を作りたくないと、その結果はお蔵入りしてしまいました…。ただ最近になって、再テストから正式に切り替わっています。

その後、同じ製品の材質違い(FCD450)が立ち上がり、そちらではライバルメーカーの超硬タップが使用されるようになりました。しかし限界とは到底思えない程度で交換されており、私のもったいない精神がうずきだしました。

こちらにタップを切り替えていただいた後、コーティングも追加し、限界に挑戦テストをすることになりました。連続運転しながら定期的に現物(ワークとタップ)を撮影して確認し、100個や50個単位で変化を確認していく立ち合いテストを実施。7時間+13時間+10時間の3回によって、定数を1,500個から6,000個まで延ばすことができました。

多い時で200本/月ほどご注文いただいていたので、定数アップをしなかったらと思うと…。

そしてそのタップは、同社の海外工場でも使用していただけるようにもなりました。

思えば私のドクターセールス活動は、このお客様のこれらの案件から始まったのだと思います。

現場・現物確認、油まみれもなんのその、お客様と共に改善していくこと、五感を駆使すること…など、多くを学ぶことができました。そして頑張ったご褒美としていただいたご注文の嬉しさといったら、何にも代えられません。

25年以上も前のことですが、昨日のことのように思い出されます。

その時にご指導くださり、褒めてくださった生産技術のMさん、製造のK課長、工具室の故・K課長には、感謝を言い尽くせません。この場を借りて、御礼申し上げます。